この記事で伝えたいこと
- 採用計画は「何人採るか」より先に、なぜ採用するのかを確かめる
- 異動や業務の分担など、採用以外で解決できる可能性も確認する
- 複数職種の優先順位は、事業・業務への影響の大きさと、影響が出るまでの時間から決める
中小企業の採用計画は、求人を出す前に採用目的から整理します。本当に採用が必要かを確認し、事業や業務への影響から優先順位・人数・期限を決め、市場を見て計画を見直す進め方を解説します。
「営業を3人採りたい」と相談されたとしても、私はすぐに3人分の求人を作るとは限りません。まず、なぜ3人必要なのか、今いるメンバーはどんな仕事をしているのかを聞きます。話してみると、最初に必要なのは営業1人で、残りの仕事は配置や役割を見直せば対応できるかもしれません。逆に、すぐに3人必要な理由が見えてくることもあります。
採用計画は、人数と期限を先に埋める書類ではありません。なぜ採用するのか、本当に採用で解決すべきなのか、採用できなければいつ何が困るのか。そこから順番に考え、求人を出す前に実現できる条件かを確かめるためのものです。
「3人採る」「できるだけ早く」という言葉だけでは、求人の内容も、採用活動の優先順位も決まりません。3人を同時に探す必要があるのか、まず1人採って業務を引き継げばよいのかで、進め方は変わります。
私は採用の相談を受けると、最初に募集背景と現在の組織を聞きます。人数はそこで初めて検討する仮説です。採用を進めながら条件を直すこともあるので、最初から完璧な計画書を作る必要はありません。
求人票の「募集背景」を書くためだけではなく、何を解決したいのかを確認します。欠員の補充なのか、事業を伸ばすための増員なのか。同じ職種でも、背景が違えば必要な時期や任せる仕事も変わります。
退職者がいるなら、いつ退職し、その人が実際に何を担当しているかを確認します。採用できなければどの仕事が止まり、誰が代わりに担うのか。既存社員の負荷だけでなく、締切や業務品質にいつ影響が出るのかまで聞きます。
「経理担当が辞める」と聞いても、請求、月次の締め、社内からの問い合わせ対応では引き継ぎに必要な時間が違います。退職日だけを採用期限にせず、仕事を覚える期間も見ておきたいところです。
どの事業や仕事のための増員か、なぜ今必要なのかを聞きます。既存メンバーでは対応できない理由も確認します。
たとえば案件を受けられず売上機会を逃しているなら、どの仕事で、いつから、どれくらい影響が出るのかを整理します。「忙しくなってきた」という感覚だけでは、増員の優先順位や人数を決めにくいためです。
採用する目的が分かったら、その目的を達成する方法が新たな採用しかないのかを考えます。採用には時間がかかりますし、人が入れば必ず解決するとも限りません。
今いるメンバーの役割や部署間の配置を見直せないか確認します。ただし、誰かを動かせば元の部署に穴が開くこともあります。異動先だけでなく、異動元の仕事への影響も合わせて見ます。
継続して任せたい仕事か、一定期間の繁忙への対応かで選択肢は変わります。仕事の性質や社内で持ちたい役割に応じて、アルバイトや業務委託などで対応できるかも検討します。雇用形態を変えること自体を目的にはせず、担ってほしい仕事から決めます。
「営業が足りない」と言われても、足りないのは新規開拓の人手なのか、既存顧客への対応なのか、資料作成など周辺業務の時間なのかで必要な人は違います。仕事を分けてみると、採るべき職種や人数が変わることがあります。
もちろん分解しても採用が必要な場合はあります。まずは、採用した人に何を任せれば問題が解決するのかをはっきりさせます。
複数の部署から採用依頼が来たとき、私は売上に近い職種から機械的に並べません。事業・業務への影響の大きさと、影響が出るまでの時間の両方で考えます。
営業なら、採用できないことで受けられない案件や失う売上機会があるか。経理や総務なら、直接売上を作らなくても、他のメンバーへ仕事がしわ寄せされ、通常業務や締切、品質にどれだけ影響するかを見ます。
影響の種類が違うので、売上額だけで比べる必要はありません。現場で何が止まり、誰に負荷が移るのかを具体的にする方が判断しやすくなります。
影響が大きくても半年後に準備すればよい職種と、来月の締め業務から支障が出る職種なら、先に動くべきなのは後者かもしれません。
「採れなければ、いつ、何が起こるか」を職種ごとに並べます。急ぎの理由が分かれば、採用活動に使える時間や、社内で一時的に対応できる期間も見えてきます。
ここで初めて「何人必要か」に戻ります。営業3人という要望なら、現在の組織構成と業務量を確認し、1人が担う仕事、採用後の引き継ぎや育成にかかる時間まで考えます。
異動や業務分解で対応できる部分はないか。1人目の入社で状況がどれくらい変わるか。3人同時に必要なのか、時期を分けられるのか。現場の要望を否定するためではなく、必要な人数を根拠とともに決めるための確認です。
「できるだけ早く」では、採用活動をいつ始めるべきか判断できません。まず、採用できなければ事業や業務に影響が出る日を確認します。そこから、仕事の引き継ぎや育成に必要な期間を考え、入社してほしい日を決めます。
順番は事業上の期限 → 必要入社日 → 募集開始時期です。たとえば繁忙期に一人で業務を担当してほしいなら、その当日が必要入社日ではありません。入社後に仕事を覚える期間と、募集から選考・入社までの時間をさかのぼります。採用の難易度によって必要な時間は変わるため、この時点では仮置きで構いません。
現場から「業界経験が必須」「経験5年以上」という条件が出たら、そのまま求人要件にはしません。募集背景、仕事内容、組織構成、入社後に任せる役割をもう一度聞き、その条件がなければ具体的に何ができないのかを確認します。
入社後に教えられることまで必須にすると、対象者を狭めてしまうかもしれません。一方で、すぐに一人で担当する必要がある仕事なら、経験を外せないこともあります。ここでは条件を確定しきらず、必須と相談できる条件を分けて仮置きします。詳しい人物像や訴求は、次の求人設計で詰めれば十分です。
採用要件を仮置きした後は、採用ペルソナ・採用ターゲットの決め方で、経験年数や業界経験が本当にMustなのか、転職理由や自社を選ぶ理由まで整理してから求人へ進みます。
社内で筋が通る計画でも、その条件で働いてくれる人が見つかるとは限りません。求人を出す前に、募集する地域の市場を見て仮の要件と照らし合わせます。
競合する求人の数や内容、給与の水準、勤務地や働き方、必須条件の厳しさを確認します。そもそも対象になる経験を持つ人がそのエリアにいるか、いたとして自社の条件で応募を考えられるかまで見ます。
求人件数だけで判断するのではありません。同じ給与でも、通勤や勤務時間の条件が違えば候補者の選択肢は変わります。
アルバイトなら、近隣に学校や住宅街があるか、公共交通機関などで通いやすいかも確認します。その場所に、募集する時間帯に働けそうな人がいるかを考えるためです。
市場を見て、想定する人材がほとんどいない、給与や働き方が競合と合っていないと分かったら、給与、必須条件、勤務時間、雇用形態などを再検討します。予算や業務上の制約で変えられない条件もあります。その場合も、人数や期限を見直す判断が必要です。採用計画を立て、市場を確認し、計画へ戻る。この往復をしてから求人に進みます。
年間1名程度の欠員補充で、これまで同じ職種を安定して採用できており、仕事内容と条件も明確なら、詳細な計画書を作る必要はないかもしれません。なぜ補充するかと必要な入社時期を確認し、これまでの進め方を使う方が早い場合もあります。
一方で、採用人数が増えた、複数職種が重なった、今までの条件では採れなくなったときは、前提から整理し直した方がよいと思います。計画書の厚さではなく、判断に必要なことが決まっているかを見ます。
求人を出す前に、次の8項目を自社の言葉で説明できるか確認してみてください。空欄があれば、関係者と話す際の質問にも使えます。
| 確認すること | 自社で整理する内容 |
|---|---|
| なぜ採用するのか | 欠員・増員・事業拡大など |
| 採用できなかった場合どうなるか | 売上・業務・既存社員への影響と、その時期 |
| 採用以外の方法で解決できないか | 異動・業務分解・雇用形態など |
| どの採用を優先するか | 影響の大きさと影響が出るまでの時間 |
| 何人必要か | 本当にその人数が必要か |
| いつまでに入社してほしいか | 事業・業務上必要になる時期 |
| 市場で実現可能か | エリア・給与・人材・働き方・要件など |
| 誰が採用活動を進めるか | 応募対応・日程調整・選考等の担当 |
最後の項目も忘れたくありません。求人作成、応募者への連絡、日程調整、面接、合否判断、採用数値の確認を誰が担うのか、最低限決めておきます。担当が曖昧だと、計画を立てても候補者への対応が止まりがちです。専任担当がいない場合の進め方は、採用担当がいない中小企業の採用の進め方でも詳しく説明しています。
目的、優先順位、人数、期限が決まり、市場とも照らし合わせたら、次は採用ターゲット・採用ペルソナを整理し、対象になる人の経験や転職理由を考えます。そのうえで求人票で仕事内容と条件を伝え、適した求人媒体を選びます。順番に進めても、実際の応募状況を見て要件に戻ることはあります。
求人を出した後に応募が来なければ、すぐ媒体や給与だけを原因と決めず、応募が来ない求人で最初に確認したい数字と改善の進め方を参考に、どこで候補者が止まっているかを確認してください。
採用計画は「何人を、いつまでに採るか」から始めるものではありません。なぜ採用するのか、採用以外で解決できないか、採用できなければいつ何に影響するのかを確認する。そのうえで優先順位・人数・期限を決め、市場を見て必要なら修正します。
採用人数や優先順位がまだ整理できていなくても問題ありません。EnterLinkでは、募集背景や現在の組織状況を伺いながら、本当に採用が必要か、何から採用すべきかという段階から一緒に整理しています。
採用について、一度整理してみたい方へ
採用職種・優先順位・どこで止まっているかを確認し、自社で進める部分と外部を使う部分まで整理します。