この記事で伝えたいこと
- 業務自動化は、AIやRPAなどのツール選びから始める必要はない
- まず「なくす・減らす」を確認し、残った業務から自動化する意味があるものを選ぶ
- 自動化できる業務と自動化すべき業務は同じではない。費用対効果やエラー時の影響まで見て判断する
中小企業の業務自動化は何から始めるべきか。現在の業務を整理し、「なくす・減らす・自動化する・人に残す」を判断する方法を解説。自動化できる業務と自動化すべき業務の違い、費用対効果やエラーリスク、AI活用の考え方まで整理します。
「この作業を自動化したい」「AIを使えばもっと効率化できるのではないか」。業務改善を考えるとき、最初に自動化の方法やツールを探したくなることがあります。
ただ、技術的に自動化できることと、その業務を自動化すべきことは同じではありません。 そもそも不要な業務なら、速く処理できる仕組みを作るより、業務自体をなくした方がよい場合があります。必要な業務でも、すべての工程を残す必要があるとは限りません。
この記事では、現在の業務を整理したうえで、なくす → 減らす → 自動化する → 人に残すの順に判断する方法を解説します。AI、Excel、VBA、SaaS、独自システムは、その判断をした後に選ぶ手段です。
自動化したい業務があるとき、最初に確認したいのは「どのツールならできるか」ではありません。まず、現在の仕事がどのように流れているかを整理します。
中小企業庁も、デジタル化を進める際の業務の棚卸しについて、十分にできている企業ほどデジタル化の効果を実感している割合が高い傾向を示しています。自動化の前に現在の業務を見える状態にすることには意味があります。
参考:中小企業庁「2023年版 中小企業白書 第2部第3章第2節」
最初に、「何のためにこの業務を行っているのか」を確認します。
たとえば毎週レポートを作っているとしても、経営判断に使う資料なのか、顧客への報告なのか、以前から続けているだけなのかで扱いは変わります。業務名だけではなく、誰が、何を判断・実行するための仕事かまで確認します。
目的が説明できないからといって、すぐ廃止するわけではありません。ただし、「昔からやっているから」以外の理由が見つからなければ、見直す候補になります。
次に、仕事の始まりから終わりまでを見ます。
この流れを整理すると、「同じ情報を別の台帳にも入力している」「一度確認した内容を別部署でも確認している」といった重複が見えやすくなります。
業務改善そのものをどこから整理すればよいか分からない場合は、中小企業の業務改善で最初に整理したい5つのことで、困りごと・業務フロー・改善方法までの考え方を整理しています。
自動化を考えるときに見落としやすいのが、通常ルート以外の処理です。
「申請内容を集計する」という業務でも、入力漏れがあった場合、金額が一定条件を超えた場合、取引先ごとに処理が違う場合など、例外があるかもしれません。また、途中に上長確認や承認があるなら、その目的も確認します。
通常処理だけを見て「自動化できる」と判断すると、例外が起きるたびに人が修正する仕組みになりかねません。通常・確認・承認・例外を含めて現在の業務を見ることが最初の準備です。
自動化できる仕事は増えています。しかし、できることをすべて自動化すれば業務改善になるわけではありません。
たとえば、月に1回しか発生せず短時間で終わる作業に、大きな構築費や保守の手間をかける必要があるとは限りません。逆に、1回の作業時間は短くても、毎日複数人が繰り返しているなら、改善効果が大きくなる場合があります。
また、処理自体はルール化できても、誤った結果が顧客・契約・金銭などに大きく影響するなら、完全自動化ではなく人の確認を残した方がよい場合があります。
中小企業庁の調査では、デジタル化の費用対効果を十分に検討できている企業ほど「十分に効果があった」とする割合が高い傾向が示されています。従業員20人以下の企業では、費用対効果を検討できている企業は約3割にとどまっています。
参考:中小企業庁「2023年版 中小企業白書 第2部第3章第2節」
見るべきなのは、自動化できるかだけでなく、自動化するだけの意味があるかです。
自動化の方法を考える前に、その業務自体を残す必要があるか確認します。
中小企業庁が紹介する業務プロセス見直しの取組でも、「不要業務・重複業務の見直し・業務の簡素化」や「業務の見える化」が挙げられています。業務を見える化することで、形骸化している不要業務を発見できる可能性があります。
参考:中小企業庁「2018年版 中小企業白書 第2部第2章」
まず目的を確認します。
「この一覧を誰が使っているか」「この確認がなくなると何が困るか」「この承認は何を防ぐためにあるか」を確認すると、必要性を考えやすくなります。
誰も使っていない資料、別の資料と内容が重複する一覧、目的が失われた定例作業などは見直し候補です。ただし、見た目だけで不要と判断せず、その業務が担っている役割を確認します。
EnterLinkで業務を見直すときは、単に「手間がかかるから」という理由だけで業務をなくしません。
を確認します。
必要性がなく、業務目的も別の方法で満たせるのであれば「なくす」候補です。一方、法令や社内規程上必要な業務であれば、業務そのものは残します。
ただし、必要な業務だからといって現在のやり方まで維持する必要があるとは限りません。 業務そのものは残しても、入力項目や確認工程を減らしたり、定型処理だけ自動化したりできる可能性があります。
業務そのものをなくせない場合でも、現在の工程をすべて残す必要があるとは限りません。
ここでは「月4回を2回にする」といった頻度だけでなく、入力・確認・承認・帳票など、仕事を構成している工程を分けて見ます。
一度入力した顧客名、案件名、数量、金額などを、申請書、管理表、取引先向け書類へ毎回打ち直しているなら、重複入力を減らせないか考えます。
大切なのは、一つひとつの入力を速くすることだけではありません。どこを情報の入力元にし、後続業務でその情報を使い回せるかを考えます。
担当者が確認したあとに上長が確認し、さらに別部署でも同じ項目を確認している場合、それぞれの確認が何のためにあるかを見ます。
確認回数が多いから減らすのではなく、ミス防止、権限管理、契約条件の確認など、それぞれの目的を整理します。同じ目的のために重複している工程があれば、減らせる可能性があります。
「念のため」に追加された業務が、その後も残り続けることがあります。
たとえば、別のシステムですでに入力チェックをしているのに、同じ内容をExcelでも確認している。別部署が同じ数字を確定しているのに、再び集計し直している。こうした場合は、別工程ですでに必要な対応を満たしていないか確認します。
業務全体をなくせなくても、目的が重複している工程だけを減らすことはできます。
なくせる業務と減らせる工程を整理した後、残った仕事について自動化を検討します。
ここでは「ツールで実現できるか」だけでなく、ルール化できるか、効果があるか、費用対効果が合うか、エラー時の影響を管理できるかの4点を見ます。
まず、INPUTからOUTPUTまでの処理を説明できるか確認します。
「Aの場合はB」「金額が一定以上ならC」「この列を合計してDへ反映する」のように条件を整理できるほど、自動化候補にしやすくなります。
一方、担当者が過去の経験や周辺情報を総合して判断している業務は、そのまま自動化しにくい場合があります。その場合も、業務全体を諦める必要はありません。集計や転記だけを自動化し、最終判断を人へ残す方法があります。
次に、今どれだけ負荷があるかを確認します。
特定の「月○時間以上なら自動化」という一律の基準は置きません。業務によって、時間だけでなくミスの影響や後続業務への波及も変わるからです。
自動化には、作るときだけでなく使い続けるためのコストがあります。
などを含めて見ます。
短時間で終わる低頻度の作業なら、人が行った方が合理的なこともあります。一方、継続して多くの工数がかかる処理なら、自動化に投資する理由が大きくなります。
最後に、仕組みが誤った処理をした場合を考えます。
を確認します。
自動化は「人を完全に外すこと」ではありません。たとえば、集計は自動化し、最終確認は人が行う。データ作成は自動化し、送信前に人が承認する。このように、工程ごとに人と仕組みを分ける方法もあります。
人が作業を続けているからといって、業務改善できていないわけではありません。
自動化しないことを消極的な残り物として考えるのではなく、人が行う方が合理的な業務を意図的に残すことも判断の一つです。
人に残す理由としては、たとえば次があります。
また、一つの業務を「人か自動か」の二択にする必要もありません。
| 工程 | 考え方 |
|---|---|
| 情報収集・転記 | 条件を定義できるなら自動化候補 |
| 集計・計算 | ルール化でき、エラーを検知できるなら自動化候補 |
| 例外判断 | 条件を固定しづらい場合は人に残す |
| 最終確認・承認 | 影響や説明責任に応じて人の確認を残す |
「人にしかできない仕事」だけではなく、今は人が行う方が合理的な仕事もあります。将来、件数や技術、業務ルールが変われば、あらためて自動化を検討すればよいです。
ここまでの考え方を、1つの業務に当てはめると次の順番になります。
業務自体が不要なら「なくす」。必要なら次へ
不要・重複工程があれば「減らす」。残った工程を次へ
処理をルール化できなければ、その判断部分は人に残す
効果や費用対効果が見込めなければ、人に残す選択もする
リスクを管理できれば自動化。難しければ人の確認を残すか、人に残す
このフローは、必ず業務全体をどれか一つに分類するためのものではありません。たとえば「申請業務」でも、不要な入力項目は減らし、転記は自動化し、最終承認は人に残すという分け方ができます。
自社の業務では、次の10項目を確認してみてください。
全部にYESをつけることが目的ではありません。分からない項目があれば、そこがツールを探す前に整理したい部分です。
ここまで整理して初めて、「何を使って実現するか」を考えます。
AIも業務改善の手段の一つです。EnterLinkでは、業務の目的やフロー、INPUT・OUTPUTを整理したうえで、改善案の検討、Excel関数の検討、VBAやプログラムの設計、コード作成の支援などにAIを活用できます。
一方で、AIに業務実行を丸ごと任せるかどうかは別に考えます。生成AIは利用形態やユースケースによって想定されるリスクが変わるため、デジタル庁も用途や工程に応じたリスク・対策を整理しています。
参考:デジタル庁「テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック」
EnterLinkでは、特に結果の誤りが業務へ大きく影響する場合、生成AIに実行まで丸ごと委ねるのではなく、人による確認や、処理内容を明確に定義した仕組みを組み合わせることを重視します。これはAIを使わないという意味ではなく、用途とリスクに応じて使う場所を決めるという考え方です。
そして、自動化すると決めた後は、その処理をExcelやVBAで行うのか、既存SaaSを使うのか、独自システムを検討するのかという次の判断があります。Excel・SaaS・独自システムの判断基準では、その選び方を5段階で整理しています。
業務自動化は、ツールを選ぶところから始める必要はありません。
まず、その業務が本当に必要かを見る。必要なければなくす。業務は必要でも、重複している工程や入力、確認があれば減らす。そのうえで残った処理のうち、ルール化でき、効果・費用対効果・エラーリスクが見合う部分を自動化します。
そして、人の判断や確認に意味がある業務、自動化コストに見合わない業務は、意図的に人へ残します。
自動化できる業務と、自動化すべき業務は同じではありません。 AI、Excel、VBA、SaaS、独自システムは、どれも業務改善の手段です。
業務改善で重要なのは、自動化すること自体ではなく、その業務を最も合理的な状態にすることです。
業務改善のご相談
「この作業を自動化したいけれど、本当に自動化すべきか分からない」「ExcelやAI、SaaSを使えば効率化できそうだが、何から変えるべきか判断できない」そんな場合は、現在の業務目的や業務フロー、INPUT・OUTPUT、作業量などを確認し、なくす・減らす・自動化する・人に残すのどこから見直すべきか整理します。